狩りの使ひ 【伊勢物語】を現代語訳!京大卒、国語教員免許保持者が解説!

狩りの使ひ

狩りの使ひ 【伊勢物語】を現代語訳

狩りの使ひ 【伊勢物語】を現代語訳していきます!定期テスト対策などの学習にお役立てください!

(見やすいように、原文と現代語訳を交互に記載していきます!)

原文)昔、男ありけり。

訳)昔、ある男がいた。

原文)その男、伊勢の国に狩りの使ひに行きけるに、

訳)その男が、伊勢の国に鷹狩りの勅使として行った時に、

原文)かの伊勢の斎宮なりける人の親、「常の使ひよりは、この人よくいたはれ。」

訳)あの伊勢神宮の斎宮であった人の親が、 「普段の使いよりは、この人を十分にもてなしなさい。」

原文)と言ひやれりければ、親の言なりければ、いとねむごろにいたはりけり。

訳)と伝えていたので、親の言葉であったから、とても心をこめて丁重にもてなした。

原文)朝には狩りに出だし立ててやり、夕さりは帰りつつ、そこに来させけり。

訳)朝には狩りに送り出してやり、夕方は(男が)戻っては、そこに来させた。

原文)かくて、ねむごろにいたつきけり。

訳)このように、心をこめて世話をした。

原文)二日といふ夜、男、われて、「逢はむ。」と言ふ。

訳)二日目のという夜、男は、無理に、「逢いたい」と言う。

原文)女もはた、いと逢はじとも思へらず。

訳)女もまた、それほど逢いたくないとも思っていなかった。

原文)されど、人目繁ければ、え逢はず。

訳)しかし、人目が多いので、逢うことができない。

原文)使ひざねとある人なれば、遠くも宿さず。

訳)(この男は)勅使として来ている人であるので、遠くにも泊めない。

原文)女の閨近くありければ、女、人を静めて、

訳)男の部屋は女の寝室の近くにあったので、女は、周囲の人を寝静まらせて、

原文)子一つばかりに、男のもとに来たりけり。

訳)午後十一時から十一時半頃に、男の所にやって来たのであった。

原文)男はた、寝られざりければ、外の方を見出だして臥せるに、

訳)男もまた、(女のことを思って)眠れなかったので、外の方を見やって横になっていると、

原文)月のおぼろなるに、小さき童を先に立てて、人立てり。

訳)月の光がぼんやりかすんでいる中に、小さな童女を先に立たせて、人が立っている。

原文)男、いとうれしくて、わが寝る所に率て入りて、

訳)男はとても嬉しくて、自分の寝床に連れて入って、

原文)子一つより丑三つまであるに、まだ何事も語らはぬに帰りにけり。

訳)午前二時から二時半まで一緒にいたが、まだ何事も語り合わないのに(女は)帰ってしまった。

原文)男、いと悲しくて、寝ずなりにけり。

訳)男は、とても悲しくて、寝ないで夜を明かしてしまった。

原文)つとめて、いぶかしけれど、わが人をやるべきにしあらねば、

訳)翌朝、気がかりであるけれど、自分の方からの使いをやるわけにはいかないので、

原文)いと心もとなくて待ちをれば、明け離れてしばしあるに、

訳)とても待ち遠しい思いで(女からの手紙を)待っていると、夜がすっかり明けてしばらくたった頃に、

原文)女のもとより、詞はなくて、

訳)女のところから、手紙の言葉はなくて、

原文)[君や来し我や行きけむ思ほえず 夢かうつつか寝てか覚めてか]

訳)「あなたがやってきたのでしょうか、私が行ったのでしょうか、わかりません。夢なのでしょうか、現実なのでしょうか。寝ていたのでしょうか、起きていたのでしょうか。」

原文)男、いといたう泣きて詠める、

訳)男は、たいそうひどく泣いて詠んだ、

原文)[かきくらす心の闇に惑ひにき 夢うつつとは今宵定めよ]

訳)「真っ暗になってしまった心の闇の中で、私は迷ってしまいました。夢か現実かは、今夜決めてください。」

原文)と詠みてやりて、狩りに出でぬ。

訳)と詠んで贈って、狩りに出た。

原文)野にありけど、心はそらにて、今宵だに人静めて、

訳)男は野を歩き回るけれども、心はうわの空で、せめて今夜だけでも人を寝静まらせてから、

原文)いと疾く逢はむと思ふに、国守、斎宮頭かけたる、狩りの使ひありと聞きて、

訳)たいそう早く逢いたいと思っていると、伊勢の国の国守で、斎宮寮の長官を兼ねている人が、鷹狩りの勅使がいると聞いて、

原文)夜ひと夜酒飲みしければ、もはら逢ひごともえせで、

訳)一晩中酒宴を催したので、全く逢うこともできないで、

原文)明けば尾張の国へ立ちなむとすれば、男も人知れず血の涙を流せど、え逢はず。

訳)夜が明けたら尾張国へ向けてきっと出立しようとするので、男もひそかに血の涙を流すが、逢うことはできない。

原文)夜やうやう明けなむとするほどに、女方より出だす杯の皿に、歌を書きて出だしたり。

訳)夜が次第に明けようとする頃に、女のほうから差し出す杯の皿に、書かれた歌を書いてよこした。

原文)取りて見れば、

訳)男が取って見ると、

原文)[かち人の渡れど濡れぬえにしあれば]

訳)「徒歩の人が渡っても濡れない浅い川のように、浅い浅い縁でありましたので。」

原文)と書きて、末はなし。

訳)と書いてあって、下の句はない。

原文)その杯の皿に、続松の炭して、歌の末を書き継ぐ。

訳)男はその杯の皿に、松明の燃え残りの炭で、歌の下の句を書き継ぐ。

原文)[また逢坂の関は越えなむ]

訳)「私はまた逢坂の関をきっと越えようと思います。」

原文)とて、明くれば尾張の国へ越えにけり。

訳)と詠んで、夜が明けると(男は)尾張の国へ越えて行ってしまった。

原文)斎宮は水尾の御時、文徳天皇の御娘、惟喬親王の妹。

訳)この斎宮は清和天皇の御代、文徳天皇の皇女、惟喬親王の妹である。

狩りの使ひ 【伊勢物語】学習ポイントを解説!

狩りの使ひ 【伊勢物語】の学習ポイント解説①全体概観と「男」と「女」の関係

鷹狩りの勅使としてきた男を、斎宮の女が世話をするうちに、お互いを意識するようになり、二日目の夜中に女は男の部屋を訪れるが、何も語り合えないまま帰ってしまったという内容のお話です。

まず「朝には狩りに出だし立ててやり、夕さりは帰りつつ、そこに来させけり。」の意味を考えてみましょう。現代語訳に適宜言葉を追加すると、

朝には(さまざま用意をして)狩りに送り出してやり、夕方は(男が)戻っては、そこ(斎宮の邸宅)に来させた。

上記のようになりますが、斎宮が勅使の男をたいそうもてなしている様子が分かるのではないでしょうか。

1つ目のポイントとして、「男」と「女」の関係を考えてみましょう。

男は勅使として、伊勢の国へ遣わされた狩りの使いで、いつもよりも丁寧にもてなすように言われるほどの高い立場の人であることがわかります。そして、女は、伊勢の斎宮で、親からは今回の使いの男を丁寧にもてなすように言われた立場の人であることがわかります。

女性側は恋愛とは程遠い立場にある人であり(神に仕える立場なので、恋愛できない)、かつ男を丁寧にもてなすように言われている中で、男の部屋に行って、どうしたらいいかわからなかったのでしょうね。

狩りの使ひ 【伊勢物語】の学習ポイント解説②本文中の用語の意味

本文中の用語の意味を確認しておきましょう。

「よくいたはれ」の意味:十分にもてなしなさい

「ねむごろにいたはりけり」の意味:心を込めて丁寧にもてなした

「夕さり」の意味:夕方

「え逢はず」の意味:逢うことができない

「明け離れて」の意味:夜がすっかり明けて

「しばしあるに」の意味:しばらく経った頃に

「惑いにき」の意味:迷ってしまった

「今宵定めよ」の意味:今夜もう一度会いましょう(直訳は、今夜決めてください)

「歩けど」の意味:歩き回るけど

「心はそらにて」の意味:心は上の空で

「疾く逢はむ」の意味:早く会いたい 

「続松の炭して」の意味:松明(たいまつ)の燃え残りの炭で

 ※「して」は手段・方法を表す格助詞

狩りの使ひ 【伊勢物語】の学習ポイント解説③和歌の意味

女の「かち人の渡れど濡れぬえにしあれば」と男の「また逢坂の関は越えなむ」はどのような気持ちを伝えあったのでしょうか。

「えにし」が「江にし」と「縁(えにし)」の掛け言葉であることがポイントですね。

えにし

https://kobun.weblio.jp/content/%E3%81%88%E3%81%AB%E3%81%97

「濡れえにし」で女は男との縁が浅いものであったと詠み、下の句を付けさせることで男の気持ちを知りたい気持ちがあり、男はその上の句に対して、また会いたいことを伝えている。

定期テストで心情を聞かれたら、上記のように解答すればよいのではないでしょうか。

 

狩りの使ひ 【伊勢物語】の現代語訳と学習ポイントをまとめてみました!定期テスト対策などに活かしていただければ幸いです!

また、他にも現代語訳をしておりますので、学習に活用してください!

https://shiningfreeter.com/uikouburi/2453/

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